3年前から自分好みの若手作家の絵画を購入していますが、初めて画廊に入店したり、初めて絵画を購入するときはやはり緊張しました。
また、絵画の値段や画廊や百貨店の特徴など、わからないことばかりでした。
一方、絵画を購入し家に飾ると、買ってよかったという気持ちになります。検討を重ね選択し所有した絵画を自宅で観賞するのはすごく楽しく癒しにもなります。
まだまだ、アートコレクターとしては初心者ですが、私の経験等をつらつら書いていきます。
絵画の画材
ひとことに絵画といっても、画材によって絵画の雰囲気が大きく変わります。それぞれ原画(一枚オリジナルな絵)の場合次のような違いがあります。
(エディション番号を付与する複数枚の販売の場合は、版画、シルクスクリーン、ジークレープリント等 で制作します)
油絵の具
西洋絵画の画材として昔から使われており、現代絵画でも主流なのが「油絵の具」です。色数が多く耐久性が高いのが特徴です。また、上塗り重ねていき凹凸をだす絵はだいたいが「油絵の具」を使っています。
キャンパスに「油絵の具」の現代絵画は大きいサイズも多くほとんど額装されずそのまま売られています。額装しなくても直射日光や湿気さえ避ければ半永久的に保存可能です。
アクリルガッシュ/アクリル
「油絵の具」ほどではないが耐久性が高く、さらに耐水性がある画材が「アクリルガッシュ」です。よって、デザイン用の画材としてよく利用されています。パレット上で固まると水で復元できないため使用には注意が必要です。
アクリルガッシュは不透明ですが、透明性があり同じく乾くと耐水性になる画材は、「アクリル」です。水彩のような透明感ととアクリルガッシュの耐水性の作品を作りたい作家は、この画材を好みます。
岩絵の具
日本画に使う画材は和紙に描き、絵具自体に固着力がないため、膠(にかわ)という自然の接着剤と水をたして描きます。有名な日本画家は、鉱石を砕いて作られた「岩絵の具」を使っています。
「岩絵の具」も和紙も繊細であり、既に額装された絵画がほとんどです。
透明水彩/鉛筆
学校の美術の時間で使う初心者にも使いやすい画材が「透明水彩」です。耐久性が低いため紙以外に書くことは適さず、販売画家はあまり利用しません。ただ、透明感があり、静物画や風景画を描くととても美しく感じます。
また、最近「鉛筆」を使うケースも増えています。繊細で精密に描くことができ、写実的ながら幻想的に描かれることができ、個人的にもとても好きな画材です。
価格
絵画の価格はどのように決まるのでしょう。作家によって異なりますし、絵画の大きさによっても異なります。販売場所においてはどうでしょうか。
号評価
原画の場合一般的に「号評価」が作家の作品価格の基本となります。つまり、号幾ら(1号=?万円)で価格がおおよそ決められます。同じ作家であれば、百貨店でも画廊でも基本同じ号評価となります。
1号はハガキ大の大きさです。4号、6号あたりだと30cmから40cmの大きさとなり、家には飾りやすい大きさですね。また、縦横の割合の違いによりF、P、Mとつけられることもあります。
例えば P6(40.9×27.3cm) の絵画で 作家の号評価が3万円とすると この絵画は 6×3=18万円となります。
号評価のイメージ
美大在学または卒業したばかりで初めて作品を販売する作家はだいたい号5千円~1万円のスタートとなります(号5千円で6号3万円)。これで販売が成り立つと継続して販売できる作家となり、人気度合いにより号1万5千円~3万円と上昇します。
ただ価格が上がれば良いかというとそうでもなく、常時コンスタントに作家自身の絵画が売れることが前提です。号5万円となると6号で30万円と普通の人が安易に購入できる価格ではなくなるため、人気が続いている必要があります。
具体的には、月刊アートコレクターズ2月号の完売作家特集によると、中堅クラスの作家で号2~3万円、日本美術院所属作家では宮下真理子で号7万円、加来万周で号15万円、宮北千織で号25万円、そして千住博で号200万円、となります。
モダンアートの価格
号評価はあくまでも販売側のシステムでプライマリー(作家が画廊等で販売する価格)であり、セカンダリーでは価格に対する号評価の影響は大きく低下します。また、最近のモダンアートの作家では、写実的というより、抽象的やアニメティックな作風も多く制作時間が短くなっており、号評価を使わなくなってきています。よって、号評価はあくまで価格の目安として利用することをお勧めします。
購入場所
それでは、ネット等で作家の個展やグループ展の情報をもとに、画廊や百貨店に出かけてみましょう。最初は入るのにドキドキするかもしれません。特にビルの中にある画廊は独特の雰囲気もあり入店に躊躇しがちですが、思い切って入店してみれば意外に優しいオーナーが多く、また購入の強制もありませんので安心できると思います。また、百貨店はフロアー内のスペースで行っており、入りやすいと思います。
画廊
色々な画廊がありますが、ある程度特定の地域にまとまって存在しています。入店すると芳名帳がおかれていますので、記入しなくても何も言われず大丈夫ですが、できれば名前だけでも記入しておけば、再び行ったときに認識してもらえる可能性はあります。
ゆっくりと絵画を観賞しましょう。話しかけてくる場合、画廊の人間か、画家本人のどちらかだと思います。絵画についてのストーリーを色々教えてくれますが、話を聞いたからと言って気に入らなければ買わなくても全く問題ありません。一方、人気作家の場合、買いたくても既に完売のケースもあります。絵画の題名が書かれているカードに赤色や青色の丸いマークがあれば、既に売却済もしくは予約済という意味になります。
また、人気作家の場合は申し込み制の場合があります。ただし、この申し込み制度は販売側が最終的に販売先の個人を決めるため、完全に抽選をしている場合もあれば、何度も申し込んでいる人や重要顧客を販売先に決めているケースもあり、ややグレーな部分があることも認識しておくべきでしょう。最近インターネットでの申し込みも増えてきており、画廊に訪問せずに購入することも可能ですが、できれば一度は現物を見ておいた方が良いとおもいます。
次に具体的な画廊について説明します。
銀座
元々富裕層の買い物も多い地区であり、業歴の長い画廊が点在しています。
〇日動画廊 1928年創業と歴史ある画廊です
〇ヴァニラ画廊 サブカル系の作品中心です。光宗薫の作品展示も行っていました。
〇ぎゃらりい秋華洞 美人画を中心とした作品を展示しています。
〇東京画廊+BTAP 1950年創業の老舗画廊ながら現代アートを世界発信しています。
〇ARTDYNE 2019年にできた新しい画廊です。期待の若手作家中心の構成です。
〇Gallery MUMON 山下裕二、天明屋尚、をアドバイサーとする企画画廊です。
〇銀座蔦屋書店 GINZA SIXにある広い空間を利用して現代アートを展示しています。
〇美の起源 銀座画廊が運営し、幅広いジャンルを扱っています。
他にも多くの画廊が点在しています。画廊回りにぴったりの地域です。
青山/中目黒/都立大学
銀座に比べて客層が若いため、より抽象的な現代アートが中心となる地域です。
〇SH GALLERY 神宮前にあり、Backside works.等人気作家が在籍しています。
〇TAKU SOMETANI GALLERY 同じく神宮前にある若手作家中心の展示です。
〇N&A Art SITE 中目黒にあるアートスペースです。若手作家を展示します。
〇KATSUYA SUSUKI GALLERY 都立大学にある2021年の新しい画廊です。
日本橋
この地域も多くの老舗画廊が集まっています。
〇みうらじろうギャラリー 幻想的な現代絵画が中心に展示しています。
〇REIJINSHA GALLERY 猫をモチーフにしたアート展等個性的な展示を行っています。
〇Gallery TK2 2020年にオープンした新しい画廊です。
京橋/八丁堀
京橋・八丁堀も有力画廊が点在しています。
〇美岳画廊 伝統ある画廊で、多くの作家が所属し百貨店等に企画展を開催しています。
〇八犬堂 ここも百貨店等に数多くの企画展をおこなっています。
〇すみれ画廊 美岳画廊から独立した画廊で、多くの人気作家が所属しています。
〇GALLERY麟 京橋骨董通りにある抽象画中心の展示を行っています。
〇ギャラリー椿 扱い作家が40人もおり、アジアに積極的に展開している画廊です。
百貨店
多くの百貨店は上層階に画廊を併設しており、作家の個展やグループ展を行い作品を販売しています。ストリートにある画廊よりも入りやすく、また、人気作家が中心であり、作品購入ハードルも低いと思います。
各百貨店によって、特色があります。
〇西部・そごう 西武渋谷は若手のモダンアートが中心の構成です。また、横浜そごうも若手人気作家の個展を開催しています。
〇東武 池袋東武は美人画等の若手作家を含めバラエティに富んだ展示です。
〇GINZA SIX 大丸松坂屋運営のArtglorieuxというギャラリーが5Fにあります。
〇三越 銀座・日本橋ともに大物作家の高価格帯が中心のイメージがありますが、最近は色々な取り扱っています。
その他の百貨店も、アート人気が高まる中、数多くの作家を展示しています。
〇好きな絵画を見るだけでなく購入してみると違う楽しみを味わえます。
〇絵画の画材によって、作品の印象が大きく変わります。
〇1号幾らの価格が基準になります。人気作家になると価格が上昇します。
〇画廊は百貨店では、買わなくて見るだけでも大丈夫です。
〇まずひとつ作品を購入してみましょう!